食べログユーザーの投票によって選出される「The Tabelog Award 2025」の授賞式が1月29日に開催されました。
昨年を大幅に上回る出席者に会場は早くから賑わいを見せました。
「The Tabelog Award」は“おいしいを、讃えよう。”を合言葉に2017年からスタートした、
食べログユーザーの投票によって選出される国内レストランのトップオブザトップが発表されるレストランアワードです。
レストランアワードはさまざまありますが「The Tabelog Award」は覆面調査員や食のジャーナリストや専門家ではなく、
実際に店で食事をしている食べログユーザーが日本中のレストランの中からそれぞれの“舌”で選びます。
食べログに会員登録(無料)していれば誰でも投票でき、男女比も年齢も外食の頻度もかける費用もバラバラ、
もちろん政治的圧力や忖度なんて皆無のいわば国民投票によって決定される賞なのです。
今年は食べログに掲載されている全国87万店以上の飲食店の約0.07%にあたる652店がノミネートされ、
ユーザー投票によって「Gold:この国のどこにあったとしても、生涯通い続けたいお店」「Silver:一生に一度は味わっておきたい、匠の技に出会えるお店」
「Bronze:レストランを語るなら、押さえておきたいお店」にそれぞれ選ばれました。
また部門賞として「Best New Entry:今年最も飛躍した初ノミネート店」「Best Regional Restaurants:料理を通して、
その土地の風土や文化を深く味わえるお店」「Chefs' Gold:シェフが選ぶ、この国のどこにあったとしても生涯通い続けたいお店」も併せて選出されました。
授賞式は日比谷にある帝国ホテル「孔雀の間」で開催されました。受付を済ませた出席者はメイン会場前のホワイエに集まります。挨拶のハグをする人、記念撮影をする人、名刺交換する人、試食や試飲をする人、皆、発表前の時間を楽しんでいます。「まもなく開演です。お席にお着きください」とのアナウンスにそれぞれ席に向かいます。
皆が席に着いた14時半、会場が暗転すると俳優の石黒賢さんがストーリーテラーとして登場しました。「いい食材がある。いい料理人が育つ。世界の食を愛する人々が集まる。その連鎖反応こそがこの国に豊かな食文化を根付かせ、美食の国へと育ててきたのです。フランスの美食家、かのブリア・サヴァランはこのように記しています。『新しい食の発見は新しい星の発見よりも人類を幸福にする』と」と語り、ステージに上がると「The Tabelog Award 2025開宴です!」と宣言。すると正面に設置された大きな3つのスクリーンにオープニングムービーが流れました。「おいしいものを食べているときが、いちばん幸せ……この国の幸せをつくっている料理人たちへ」というメッセージに会場の人々がうなずきます。
昨年に引き続き、司会は石黒賢さんとフリーアナウンサーの笹川友里さん。はじめに主催者である株式会社カカクコム 上級執行役員 食べログカンパニー長の鴻池拓が「日本の食の可能性を広げ感動を日々提供している日本の料理人の皆様を称え、その皆様が作る日本の食の素晴らしさを国内だけでなく海外にも知ってもらい、未来へとつなげ継承することがこのアワードの意味である」と挨拶の言葉を述べました。
さあ、いよいよ各賞の発表の時間となりました。まずは部門賞から。最初に発表されたのは「Best New Entry」です。この賞は「The Tabelog Award」に初めてノミネートされた店が対象、ユーザー投票数上位10店舗に贈られました。受賞した代表者が名前を呼ばれ次々と登壇、「AZIENDA AGRICOLA SERENI PIER LUIGI」日本代表 大関秀樹氏からトロフィーと表彰状、副賞としてイタリア・モデナ産の「アチェタイアセレニ アグロドルチェ・ビアンコ3本セット」が贈呈されました。受賞したのは東京都「とり茶太郎」「薪鳥新神戸」「鮨 めい乃」「明寂」「CHIUnE」、愛知県「il AOYAMA」、京都府「徳ハ本也」「日本料理 研野」、大阪府「ぬま田」「田中圭英」の10店舗。
石黒賢さんの「これからの日本のレストランを牽引し、新しい潮流を巻き起こす皆さんです」との言葉に拍手が沸き起こります。
インタビューされた「徳ハ本也」の松本進也さんは「この1年、皆様に喜んでいただきたいという思いで料理を作ってきました。その思いが通じたことがとてもうれしい」と、また「鮨 めい乃」の幸後綿衣さんが「支えてくれた親方、お客様、漁師の方々に感謝している」と、それぞれ喜びの言葉を語りました。
続いては「Best Regional Restaurants」の発表です。都市部以外のエリアでどんなに時間をかけてでも食べに訪れる価値がある店8店舗が選ばれました。贈呈は株式会社イクス営業統括部長 田附恵一氏。北海道「余市SAGRA」、山形県「出羽屋」、神奈川県「鎌倉 北じま」、静岡県「温石」、滋賀県「う嵐」、島根県「美加登家」、広島県「AKAI」、長崎県「pesceco」が受賞し、トロフィーと表彰状、副賞として「ドリームクロック」「ラスカボヘミア クラフトビアグラスセット」が贈られました。
インタビューされたのは「出羽屋」佐藤治樹さん。「天然の食材を中心に扱っているので支えてくれる方々に感謝したい」と述べると、地方創生の側面からも食を通じて多大な貢献をされている8店舗に惜しみない拍手が贈られました。
部門賞の最後は「Chefs' Gold」の発表です。贈呈するのはアサヒビール株式会社グローバルビアブランド室の相川賢太郎氏。ノミネート店の料理人が“今、おいしいと思う店”と選ばれた13店舗の顔ぶれは富山県「L’évo」、東京都「日本橋蛎殻町 すぎた」「ESqUISSE」
「Quintessence」「鮨 あらい」「茶禅華」「CÔTE D’OR」「新ばし しみづ」「松川」、静岡県「成生」、京都府「緒方」、大阪府「本湖月」、福岡県「天寿し 京町店」。トロフィーと表彰状、副賞に1963年イタリア・ローマで誕生したプレミアムイタリアンビール「PERONI ナストロアズーロ1ケース」が贈られました。昨年より2店舗増えて13店舗になりましたが、2年連続で受賞したのが7店舗もあることが誇らしく思えました。
壇上に上がり写真撮影が終わったところで本日来場している辻調理師専門学校と駒場学園高等学校食物調理科の生徒たちからの質問に答えます。1つ目の「挫折しそうになった時にどう乗り越えましたか?」には「鮨 あらい」の新井祐一さんが「常にプラス思考にすること。それには日々の努力と精神力を鍛えることが大事」と答えました。2つ目は「新しいメニューを考案する際のインスピレーションはどこから得ていますか?」です。これには「茶禅華」の川田智也さんが答えました。「食材を前にお客様のために何ができるかと考えているとアイデアが湧いてきます」と。3つ目は「料理人になる前にやっておけばよかったことは?」との質問に「本湖月」の穴見秀生さんが「お茶、料理以外のものも見たり経験すること。常に疑問を持つこと」を挙げましたが、「料理人にとって一番大事な包丁を、自分の歯を磨くのと同じように毎日研いでほしい、それが助けになる」との言葉が印象的でした。多くの料理人からの評価と尊敬を集め、日本の食に多大な影響をもたらすChefs' Gold受賞シェフの立ち居振る舞いはやはり堂々たるものです。
「『The Tabelog Award 2025』、いよいよ「Gold」「Silver」「Bronze」の3賞を発表します」との石黒賢さんの声に会場は一瞬緊張が走ります。正面のスクリーンに最北は北海道旭川の「鮨みなと」から、南は沖縄に初の賞をもたらした「6」まで「Bronze」に選ばれた466店舗名が流れました。続いて「Silver」の151店舗が紹介されます。予約困難店の名前がずらり、誰もが納得の選出です。
そしていよいよ「Gold」の発表です。受賞した35店舗はステージへ登壇します。プレゼンターは株式会社カカクコムの代表取締役社長 村上敦浩が務めます。はじめに呼ばれたのは北海道から東京に移転した「鮨 一幸」。続いて千葉県「PRESENTE Sugi」、愛知県「橦木町しみず」、富山県「L’évo」、大阪府「鮨 三心」、福岡県「天寿し 京町店」、東京都「銀座 しのはら」、福岡県「鮨 さかい」、東京都「蒼」「aca 1゜」「かさ原」、長野県「Naz」「柚木元」、東京都「日本橋蛎殻町 すぎた」、静岡県「温石」、東京都「茶禅華」「Chez Inno」、京都府「道人」、静岡県「馳走西健一」、福岡県「近松」、東京都「鮨 あらい」「PELLEGRIONO」の代表者が次々とステージへ向かいました。
登壇した皆さんの晴れやかな表情、背筋がピシッと伸び、ここまでやってきたことへの自信と料理人であることの誇りを感じます。この後、会場に来られなかった東京都「さわ田」「鮨 さいとう」「松川」「日本料理 晴山」「新ばし 星野」「東麻布 天本」、石川県「片折」、静岡県「成生」、滋賀県「う嵐」、京都府「啐啄 つか本」「飯田」「仁修樓」、兵庫県「北野坂 木下」の名が呼ばれました。こちらも昨年と同じ35店舗中2年連続の受賞店が28店舗もあり、トップの名に驕ることなく前進していることがうかがえます。
インタビューは初の「Gold」受賞となったお三方に。「Naz」の鈴木夏暉さんは「祖父がレストランを経営していたので料理人になることは必然だった。毎日命を懸けて料理しているので受賞はとてもうれしい」と話しました。続いて「Chez Inno」の古賀純二さんにマイクが向けられました。古賀さんのファッションセンスの良さに石黒賢さんは「見られていることを意識されていますか」と質問する一幕も。答えは「身だしなみには常に気をつけている」とのこと。もうひと方、「馳走西健一」の西健一さんには「料理のゴールとは?」の質問に「その時その時の100%を意識して料理すること。この店があって良かった、あなたの料理が食べられて良かったと言われる料理人を目指している」と語りました。
最後に司会のお二人から「普段聞くことができないシェフの思いを聞ける場は本当に貴重である。一つひとつの店舗こそが日本の誇る匠の技を世界に発信し、食の文化を魅力的で活気に満ちたものにしてくれる立役者であり、その努力と情熱はかけがえのないものだと思います。おいしい料理と素晴らしい体験を通じて幸せを届けてくださることに改めて心から感謝申し上げます」と締めくくり授賞式が終了しました。
今年もたくさんの人と交流できるようにと、前回と同じスタンディングスタイル。皆さん自由に歩き回りあちこちで写真撮影や名刺交換が行われ親睦を深めています。多忙ゆえ、普段なかなか会うことができないシェフたち、ここぞとばかりに気になっていた料理の調理法を教えてもらったり、お互いの店の予約をしたりと本当に楽しそう。
そしてもう一つのお目当てはフードとドリンク。今年も「The Tabelog Award」にふさわしい名店がプレミアムイタリアンビール「PERONI」に合う料理を提供しています。昨年に引き続き出店した「おにぎりぼんご」には早くも行列ができていますが、並んでいるのはいつも自らの店を行列にしているシェフという、ちょっと面白い光景に思わずクスリとしてしまいます。厳選した九州食材と一糸乱れぬ美しい麺線でラーメンマニアに絶大な人気を誇る「Ramen Break Beats」にも長蛇の列ができ、予約9カ月待ちの「発芽そば ゆき」では店主の井上友貴さんによるそばの手打ちを真剣に見て学んでいるシェフの姿もありました。
このそばがきに「SALUMERIA69」の生ハムをのせ、酒番・多田正樹さん厳選のクラフト酒を一緒に口に流し込むとこの上ない複雑妙味に卒倒します。「おかしやうっちー」は今年も大人気で早々に売り切れてしまいました。
授賞式に参加された料理人の方々の感想を一部紹介しましょう。「食を通してみんなが元気になるのは本当に素晴らしいこと」(「レストラン ラフィナージュ」高良康之さん)、「一流のシェフの立ち居振る舞いを見られて勉強になります。一生に一度のことだと思って楽しんでおります」(「YAKITORI 燃 es」沼能大輔さん)、「フランス料理の魅力をたくさんの人に知ってもらえるように活動していきたい」(「Quintessence」岸田周三さん)、「このアワードは地方の人間にとってすごく励みになります。素晴らしい料理人の方々と会えるので1年間、待ち遠しくて仕方ありません」(「 L’évo」谷口英司さん)、「自分の店を持ってからも呼んでいただいて気持ちの入り方が違います。いつか『Gold』を獲れるように頑張ります」(「銀座 大石」大石義一さん)、「数年ぶりに参加しましたが刺激になります」(「くろ﨑」黒﨑一希さん)、「来年は壇上に上がりたいと決意しました」(「天婦羅 くすのき 中目黒店」市原辰也さん)、「ここは皆さんに会えるのが貴重です。札幌から銀座という最高の舞台に来て新たな気持ちで頑張ります」(「鮨 一幸」工藤順也さん)、「お寿司が好きという気持ちで技術を学び頑張ってきた。ずっと背中を見ていた親方と同じ場所にいられてうれしい」(「鮨 めい乃」幸後綿衣さん)と、口々にこのアワードは大切な存在だと語ってくれました。師や友人と話すことで日々の緊張がほぐれたり、新しい出会いがあったり、新たな目標ができたりと存分に楽しみ、また来年集まることを約束してそれぞれの場所に帰っていきました。
「昨年から参加していますが生産者にもスポットを当てていただき、また料理人さんとも出会えてつながっていけるのもうれしい」と話すのは愛媛県今治の“シェフが惚れ込む”漁師、藤本純一さん。「ユーザーの方々が選んだ公平性のあるメディアなので新店舗から老舗まで評価されているのは面白い」(テリヤキ株式会社代表取締役 浜崎龍さん)、「一般の人から支持されているのがわかる、料理人を勇気づけるアワードだと思いますので是非とも続けていただきたい」(フードコラムニスト門上武司さん)、など生産者や業界関係者からも好評を博しました。
今年も日本全国からお越しいただいたゲストの皆様と親睦を深める素晴らしい機会となりました。
このアワードが料理人の方々の意欲やパワーに少しでも役立つことができたら本望です。
そして、日頃より「食べログ」をご愛用くださる皆様へも、この場を借りて感謝申し上げます。
そして次回の「The Tabelog Award」もどうぞご期待ください。ありがとうございました。
ペローニがスペシャルレセプションスポンサーを
つとめた、懇親会の様子をレポート